五頭山塊 五頭連峰 (金鉢山〜菱ヶ岳縦走)

下越山岳会3月A山行記録

LOG 水場の沢をツメた カナホコ 昨日のトレース 松平山
さて、テン場発 トレースを振り返る 左奥が菱・手前が五頭 五頭山から主稜を進む 歩いてきた稜線



開催期間  平成20年3月1日(土)〜同2日(日)
山行形態  春山低山テント泊縦走
入山山域  五頭山塊
入山場所  新発田市田家集落除雪終了点
下山場所  菱ヶ岳登山道 登山口
登山ルート @田屋集落より山の神(剣龍峡)〜荒川山登山道
        A荒川山下の水場の沢をツメ市境尾根へ
        B市境尾根から金鉢山
        C金鉢山から松平山を経て五頭山、菱ヶ岳へ主稜を進む
        D菱ヶ岳より登山道を経て下山。
幕営地    松平山の南904mのピーク付近(計画では反射板付近)
参加者 
本隊 L石井(NEN)さん・会田さん・安沢(TOF)さん・田中さん・中村(NTR)さん・LTQ私(担当)
サポート
3月1日(土)高橋(OPL)さん・佐久間(QLO)さん・渡辺(し)・小林(LTK)さん
3月2日(日)田邊(OII)さん・坂場(DAE)さん・渋谷(LOM)さん

担当 LTQ・HNCさん(都合により不参加)

天候
3月1日(土)曇り時々雨後雪に変わる、朝のうち雷を伴う。
南西の風のち西から北西の風 やや強い
3月2日(日)晴れのち時々曇り
西の風のち南西

コースタイム他
3月1日(土)
06:30 集合場所集合出発
07:18 田屋集落出発(77m)
07:47 山神社(134m)
09:21 焼山(539m)
09:35 ルートを東に外してしまい登り返す
10:23 水場の沢にルートを取る(563m)
10:56 尾根に出るが市境尾根と勘違いする。
11:00 市境尾根に乗る
12:15 金鉢山(888.4m)   雪の状態悪い。切れやすい。
12:40 カナホコ 表層雪崩が怖いので東の斜面を避け、稜頂から西側を登る。
14:26 松平山分岐(923m)
14:30 雪崩誘発
14:50 テン場決定(904m)
15:45 設営完了
21:00 就寝

3月2日(日)
06:00 起床
08:40 テン場発(904m)
09:04 883mピーク
10:21 五頭山 三角点(912.5m)
11:33 中ノ岳 (915m) オッタテ尾根からの登山者とスライド
12:20 菱ヶ岳981ピークでサポート隊と合流
12:25 菱ヶ岳(973.5m)昼食
12:58 菱ヶ岳(973.5m)発
15:05 菱ヶ岳登山口着
17:05 集合場所解散

GPSデータ
TP積算距離 19.0km
移動平均速  2.5km
全体平均速  1.4km
総上昇量   2,419m

若月さんと私で五頭連峰縦走の担当を頂いた。一次案を若月さんに相談したが、もう一捻りと注文を頂いたが、この山域が不案内な私は捻ろうと思うが難しい。五頭山塊は東西南北に道路、集落が存在しているので、ある意味どこからでも入れるし、降りることができる。しかし、細かい枝尾根が複雑に入り込んでいてある意味、マニアックな低山という趣がある。私はごく普通の登山者であり一捻りするため地形図を眺めるが良い案が浮かばない。
「行きたい」とか、「行けるかな?」など強い動機がないとなかなか計画も浮かばない。
仕事や体調不良で登山計画の上程も遅れギリギリの山行実施となってしまった。

そんな急な呼びかけにも関わらず、5名の参加者を頂き実施することとなった。3月1日(土)朝、集合場所に着くと皆さん集合していて、慌しく乗り合わせ登山口となる新発田市荒川集落の最東部にあたる田屋集落を目指す。田屋集落を抜けると直ぐに除雪終了点となる。準備して林道を歩きだす。天候は朝方から雷を伴う雨である。500hpa高層天気図では東西にやや寝ているトラフが通過する予想でその後−30°クラスの寒気、850hpa下層でも−9℃の寒気流入が予想されていた。上層のトラフに前面に対応するかたちで暖気が入り雨模様だった。
下で濡れて上で凍る一番嫌なパターンで全員意気消沈。

歩き出す頃には、雨からミゾレに変わり始めた。剣龍峡側の荒川山登山道を利用する。高度を上げるに従い雪も弱くなってきた。9時30分を過ぎた頃、何だか様子がおかしい。「こんな急な下りはないよなぁ。」「方向もおかしいよ」と誰ともなく言い出す。GPS・地形図・コンパス等を各自出す。ああ・・・ヤッパリ間違っている。正しい方角を見ると松の木が見える。あの木の上だな。と見当をつけてQLOさん、LTKさんが向かう。アタリだと声が聞こえる。登山道に戻り先を急ぐ。

ムサワと荒川山(コマタ)中間の水場の沢を登る。沢の中は小さなデブリに見える雪があるが、これはスノーボール。
この時点、この場所の雪質は完全にザラメ雪、この上にベタベタの湿雪が数センチ。状態は安定していると判断して問題ないと進言した。
問題なく登り市境尾根に出たと思い込み、左に進むが尾根違い。渡辺(し)さんが違うと指摘。
お陰で早々に引き帰すことができ、戻ると直ぐに市境尾根と合流した。
後は迷うことなく金鉢山へ向かう。最後の急登を前に本隊はカロリー補給。
サポート隊は行動時間を12時で切っていたため、ノンストップで山頂を目指していった。急登を登っているとサポート隊が下山してきた。4分前に到着した。とのこと。この冬シーズンは週末毎に天候が悪く、皆さん連敗中なのでどうしても山頂を踏みたかったようだ。悪天候の中登頂され祝着でございました。

この頃から、足元の雪質の変化を感じていたし、下で雨に濡れたグローブが凍りだして指先が冷たくなり、ジンジンしてきた。水筒の水も凍りだしていた。しかし、視界は良く利く様になっていた。
金鉢山頂での気温は手元寒暖計で−5℃前後。サポートの高橋さんとスライドする際、カナホコの斜面はクラストしているかも?といわれたが鞍部まで下るとクラストより、弱層が気になって仕方ない。スノーシューで踏み込むと亀裂が出来る。降雪量が少ないので大規模に崩れることはないだろうが・・・と思いつつ、ピッケルを出して鞍部から登りだす。
最初は東側のスラブ状の雪面が楽そうなのでそのまま行こうか?と考えたが、弱層が気になるし、雪庇の下側は雪が溜まっているだろうから、少し規模が大きくなる可能性を否定できないのでリッジを進むことにした。雪が柔らかく、ピッケルでも心もとなかった。全員無事にカナホコを登り先を急ぐ。前夜ルート取りを心配した個所も視界があるので問題なく進む。
田中さんがグイグイと歩を進める。松平山から下り稜線を繋ぐのだが、左側に尾根があるのだが、どうも雪庇が嫌な感じに見えた。トップの田中さんも同様に感じたのだろう。ヒドの中心を下っていった。NTRさんと切れやすい雪だと話していた時、私が踏み出した右足の足元から右側斜面に亀裂がスパッと入りヒドを抜けた先頭の田中さんを除いて会田さん、NENさん、TOFさんの3人に小規模の雪崩が到達した。3名とも膝前後まで雪に襲われたが規模が小さく事なきを得た。
カットラインは長さ約30m、雪の深さ20cm、高低差5m程であった。カットラインを写真に撮ろうと思ったが松平山からの下降地点を見上げると、一刻も早くヒドから抜け出すことが先決と思い逃げ出すように急いで抜け出した。

本当は、反射板付近まで行きたかったのだが、時間は既に14時30分を回りLのNENさんと相談して反射板に拘らず、いい場所で幕営としたいとのことで15時を行動目安とした。
前夜、DAEさんから、未熟な担当者(私)を心配して迷い易い場所、幕営地についてアドバイスをいただいていた。松平山を過ぎると、大荒川から吹き上げる風があるので低い場所(沢源頭鞍部)より高台状の場所の方が風が弱いところもあるのでよく観察してテン場を選定するようにと教えを頂いていた。
実際、テン場手前の鞍部は雪庇が発達していた。という事は明らかに風が強いことを意味している。少し先に進ん904mピークをテン場とした。

約1時間で設営完了。雪にしまりがなく均すことが上手くいかなかった。寒さで全員急いでテント内に潜り込む。お湯を沸かしながら取り敢えずの乾杯。辛い天候でもこの一杯が疲れを癒してくれる。定時交信時間にLTK局、LOM局と交信。明日の天気は回復しそうだと聞きテント内の雰囲気も明るくなる。交信終了間際にRRXがブレイクしてきた。「LTK〜どこに居るの〜?」やはり地元の山は誰かがワッチしてくれているので非常時の事を思うと心強い。「もう、こっちはアル変してるよ〜」というと、「聞こえてるよ〜」とRRX。RRXも既にアルコール変調しているようだ。
NTRさんのプリムスのガスが無くなりEPIのカートリッジに付け替えたところガスが漏れ危うくNTRさんがメラメラと炎上するところであった。静かな男だと思っていたが、やはり燃える男。
モトイ、燃えそうな危ない男だった。
まあ、カートリッジには他社製品は使用するなと書かれているがやはり使用しないほうが無難である。今まで使っていたが今後は使わないようにしよう。

硬軟とりまぜた話しを楽しみ21時消灯。寝入りばなは酒精のせいか暖かだったが夜中は寒かった。テントのバタつく音で数時間毎に目が覚めていた。3時過ぎに田中さんが雪の状態を確認に出て行った。風も大したことなくフレームが歪むようなことはなかった。

3月2日(日)
朝予定通りに6時起床。天気は晴れ間もあり嬉しい。起床後、テント外に出た際、少し雪を掘りスコップを乗せコブシを振り下ろして雪質を観るとやはり上層の新雪のすぐ下に弱層があり昨日と状況は同じ。
7時30分テン場出発の予定。
実は無理だと思っていた。起床後、90分で出発するのは6人ではテント撤収時間を考慮すると相当に難しい。多分8時少し過ぎなると最初から予想していたが、最初から2時間とすれば2時間30分かかるのが世の常。それで、90分を設定したが、8時40分はいくら何でも遅すぎる。予定より遅れた原因は、寝る前に雪を水にしておくべきで、朝、起きてから雪を溶かすのでは時間がかかりすぎる。これはボクの大きなミス。
それにしても何に手間取ったのやら。特別、何か遅いという感じはなかったので、全員急ぐという意識が必要。
テン場を出る前に、サポート隊に電話を入れ遅れが生じている旨伝える。

昨日に引き続いて、田中さんが快調にトレースを伸ばす。コースタイムについては設定より早いペースだったが、いかんせん朝の遅れが大きすぎる。LOMさんLTKさんと1時間おきに交信しながら進む。五頭山・中の沢(裏五頭)分岐への登りが辛いが五頭山の三角点付近に人影が見える。五頭山に近づくと寒村から街中に出てきたようだ。

賑やかな五頭山から主稜を進む。それなりに発達した雪庇も見える。中ノ岳が近づくと単独者とスライド。トレースを見ると、どうやらオッタテ尾根を登ってきたようだ。中ノ岳に上がるとサポートの方々と思われる姿が見えた。後ろからみていたら、田中さんとスライドした単独者が南東側に張出した雪庇を踏み抜きかけたが落下は免れたようだ。
程なく、サポート隊と合流し暫し休憩。天気は良いがじっとしていると直ぐに身体が冷えてきた。サポート隊から飲物を頂き一休みして下山にかかる。少し下ると暑く感じる。杉鼻を過ぎる頃には雪質もベタベタの湿雪となりやがてザラメ雪となる。脚に負担のかかる雪質にうんざりしたころ沢音が聞こえ登山口に到着した。


登山計画書との整合性
@ 旧反射板付近の幕営を予定していたが、15時近くになり1km程、松平山寄りで幕営とした。旧反射板まで行くと16:00近くなり少々遅くなるので904mを幕営地とした。
A 時間を気にしてあまり地図コンパスの確認をしなかった。
B 登り始めの悪天候で幕営地でのトレーニングは無しとしたので、スリング・カラビナ類は車中に残置した。また到着時刻が遅くなり、テント内にスペース的余裕があったので荷物置場の雪洞は設けなかった。
C 朝の出発時間が、大幅に遅れた。結果この時間差を1日引きずることになった。

反省点
@ 両日を通して時間に追われ、視界が利くことをいい事にピークごとに地図読みコンパスでの確認を怠りがちであった。
A 明朝の水のことを失念しており朝になってから雪を溶かすなど段取りが悪かった。
B 参加者全員で雪山でのテントの経験を積み生活技術、テントの設営・撤収等をも含めレベルを上げスピーディーに行えるようにしたい。
C ガスカートリッジは指定メーカーのものを使うこと。
D ごく小規模ながら雪崩があったのでビーコンの使用基準はもっと引き上げても良いと思う。

雪崩遭遇報告
場所 松平山より五頭山方向へ向かうため下る下降地点より概ね200m下のヒドの中
時間 14:30分頃
規模 幅約30m 雪の深さ20p 高低差約5m
被害 けが等なし
概要 @ 場所 松平山より下る。下りルートはヒドを下った。下りきる直前に発生。
    A 隊列 田中、石井、会田、安沢、中村、笹川の順(田中は既にヒドから抜けていた。)
    B 雪の状態はコマタ下の水場の沢は明らかにザラメ雪で安定していたが、金鉢山から先は、前日からの暖気で緩んだ雪が再凍結したところに20p〜25pの新雪が乗って不連続面ができており明らかに弱層となっていた。
    C 発生 ・ 松平山の下りの時、少しのデブリがあった。スノーボールと思っていたが上を見上げたら、カット面があり
             少し驚いた。それから数分後、中村と笹川は雪が切れそうだと話しながら下っていたとき、笹川の右足下から右側
       の斜面 にほぼ水平に亀裂が走り先行していた3人の足元に雪が流れ膝位まで埋まる。
検証と対策
    @ 選定ルートについては、左の尾根を使う選択もあったが、雪庇も視認しており積雪量を考えると、通過ルートはごく
      普通の判断と思うが、積雪量がこれ以上多かったら再考の余地は残る。
    A 数珠つなぎで行動したが、これは一人ずつ通過すべきだったかもしれない。
    B ビーコンを用意しながら装着しなかったのはトレーニング用と考えていたためであり反省すべき点である。

稀なケースに遭遇した。この経験は今後に生かしたいと思う。


終わりに
本隊では参加者全員仲良く楽しく元気に山行を終えることができました。
参加者の皆様に感謝申し上げます。
サポートの皆様には1日は雨の中、金鉢山まで同行いただき、2日は菱ヶ岳まで迎えに上がって頂き、また、両日を通し車両の回送をいただき、サポートを頂きました皆様に心より御礼申し上げます。


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